Interview

結局、本音が出てしまうことも(笑)。
いつも心のせめぎあいです。
田尾創樹
業務内容は特になく、ペインティングからデザイン、音楽まで、自由という名の曖昧さをウリにする、エンタテイメント×アート系プロダクション「おかめぷろ」。現在世界を巡回中の『シャネル・モバイルアート』をはじめ、9月10日から始まった『赤坂アートフラワー08』でユニークな活動を繰り広げる社長兼アーティストに、日々の創作の中で考えていることについて聞いてみた。
取材:久保田佳克、山脇益美、ヤマグチノリコ
文:ヤマグチノリコ
写真:久保田佳克
田尾創樹 と 「おかめぷろ」
――田尾さんは「おかめぷろ」という会社をつくられ、個人名義のほかに、「オカメハチモク」「クチビル」「古川ペニー」など、さまざまな名義で活動されていますが、「おかめぷろ」のモットーは、そして目指すものとは何でしょうか。

シャネル・モバイルアート 香港(2008)
でのインスタレーション。基本姿勢は「社員一同、長いものには巻かれろ」です。つまり、まあ、業務内容はいまいち曖昧。自分たちでもよく把握していないという(笑)。「架空の会社」とたまに言われたりするんですが、ちゃんと実在していますよ。社員もふたりいますし(林田渚さんと田中舞さん。共に女性)。僕は絵やイラストも書けば、音楽も映像もつくるし、彼女たちもバンドもやれば、人の名刺をデザインしたりもする。極力そのときみんなの気が向いたことをしながら、お金を稼げたらいいな、ということで一致団結しています。
――なぜ、このようなスタイルを選ばれたのですか。

A Girl and Windows,
2007 Acrylic and origami on canvas 194x162cm完全に成り行きというか、後戻りできなかったというか(笑)。僕は、元々ロンドンで絵を描いていたんですけど、大学を休学して、何もしていなかった2年間があって。お金もなかったから、ただ家にいて、音楽をつくったり、文章を書いたりしていました。そして、面白いアイデアを考えては小包に詰めて、友人である林田に送っていたんです。一方、林田と田中は元々友達で、ふたりでベジタリアンの屋台を引いたり、演奏したりと、まあ自由なことを京都でやっていて。それで、僕が日本に帰ってきたときに、「じゃ、本腰入れてやろうか?」ということで、まず「オカメハチモク」というバンドをつくったんです。でも、もちろん誰も注目してくれないので、自分たちをプロデュースすべく「おかめぷろ」を立ち上げたわけです。「プロ」っぽい雰囲気を狙ってたんですけど、よく考えたら”プロダクション”でしたね、実際の意味は(笑)。
本音と嘘が回転する、田尾流エンタメワールド」

Untitled,
2007 Mixed media on blueprinted paper
119x84cm――音楽やペインティング、映像、パフォーマンスと、表現手段は様々ですが、根底にはどんな思いがあるのでしょうか。
伝えたいことがある、というよりは、なるべくエンタテイメント性が高いものをつくりたいと思っています。どうせ見てもらうなら、面白いと思うものがいいなと。どの表現がいちばんということはなくて、そのときに気が向いたことをやりたい。ただ、残念ながら、それと生活する方法は別だけれど。音楽はなかなか日の目を見ないので(笑)、今は絵をがんばろうかなと。
――ドローイングには、くすっと笑ってしまうような詩やキュートな恋の歌が添えられているものが多いですが、自分の感情を吐露するというよりは、エンタテイメントに特化しているのですか。

Untitled,
2007 Mixed media on blueprinted paper
119x84cm詩や歌詞づくりは、ギミックというか、言葉あそびのような感覚です。僕はベタなフレーズが好きで、説明書でもニュースでも、ちょっと面白い言い回しをストックしてしまうんです。それを、でたらめというか、「このコトバが次に来たら気持ちいいな」という風に、感覚的に組み立ててつくっている。でも、全部フィクションかといえば、そうでもありません。本音の部分と半々くらい。ふざけて書いたものの中に、ぽろっと自分の本音を織り込んだりもしますし、本当のことを書こうとしても知らない内に嘘が入っていたり、嘘をつくっているうちに本当のことを書いてしまったり……。最終的に出てくるものは、全部がミックスされたものですね。
――本音を言うよりも、フィクションや妄想を形にするほうが楽しいということでしょうか。
それもあるけれど、照れ隠しの方が強いかもしれません。照れ隠ししすぎて、回転させてすぎて、また本音が出てきちゃうこともよくあるんですけれど(笑)。だから、言葉を選ぶときは、いつも心のせめぎあいです。「これをここに置いたら、ばれちゃうかな?」みたいな葛藤はよくあります。
どうにも、上手い絵は描けん!
――現在、『赤坂アートフラワー 08』へ参加されていますが、今回はどんなイメージで作品をつくられたのでしょうか。

Untitled,
2007 Acrylic on canvas
23x16cm僕が与えられたのは、廃校になった小学校の体育館の一室。ここから、「Kiss Boy」 という男の子のストーリーをつくりました。彼は口を尖らせるクセがあって、そのせいで「Kiss Boy」というあだ名をつけられてしまう……。そんな彼の話です。ストーリー自体は、マジックで描いたスケッチを拡大コピーして着色したり、彼や彼の仲間たちをキャンバスに描いたりしています。
――田尾さんの絵画作品には、イラストに近いゆるさや魅力もあると思います。このスタイルにはどのように行き着いたのでしょうか。マンガの影響もありますか。
マンガや何かの影響というのはあまりなくて、単純に、僕には技術がないだけです。10年やっていますが、がんばって描いてこのレベルですから。写実的なものが描けないんです。だから、「上手い絵は描けん!」と、まずあきらめからスタートしている(笑)。僕は、よく展覧会の作品をつくりすぎてしまうことがあるんですけど、結局へたな分を数でがんばろうとしてしまうんでしょうね。全部展示できないこともあるから、もう少し力加減ができたら楽だな、と思うんですけど。
――「つくりすぎる」とおっしゃいましたが、きっと根本的にものをつくったり、新しいストーリーを考えたりするのがお好きなのでしょうね。次々とアイデアが浮かんでくるタイプではないでしょうか。
そうですね。子どものころから、砂遊びとか、フィジカルに手を動かしていることが好きでした。今でも、架空のストーリーを考えて絵を描いたり、くだらない歌詞やバンド名を妄想したりするのが好きです。一見実用的なことではないことをやっているときが、いちばん楽しい。
――その姿勢は、バンド名でもあり、社名の一部でもある「傍目八目」* そのもののような気もします。ご自身は、世の中を傍目からこっそり見ているような、客観的な感覚はありますか。
実は、バンド名を付けた後から意味を知ったんです(笑)。でも、「外から茶茶を入れる」というスタンスは好きですね。普通の人がテレビを見ている感覚というか、OLが給湯所で会話するようなイメージ(笑)?。そんな感じの接し方って、結構いいんじゃないかなと思います。
* 当事者よりも傍観者のほうが、物事を的確に判断できるという諺。他人の囲碁をはたで見ている人は、八目先までも見通せるということから
たお・そうじゅ

1977年生まれ。 栃木県出身。2002年 英国 チェルシー・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン、美術過程(絵画)卒業。2003年 スレイド・スクール・オブ・ファインアート、修士プログラム中退。帰国後、京都にて「おかめぷろ」設立。個人名義で絵画作品を発表するほか、「オカメハチモク」「パーフェクトダンサー」「クチビル」などのバンドや、様々な映像作品制作を始め、現代アートの枠にとらわれることなく、自由な表現活動を行う。国内外を問わず個展を多数開催し、グループ展にも何度となく参加。2008年に開催され、現在も世界を巡回中の『シャネル・モバイルアート』では、公募を経てソフィ・カルの代替アーティストとして抜擢された。東京で開催中の『赤坂アートフラワー08』(10/13まで)へも参加、新作を発表。また、東京の原美術館と品川駅を結ぶアートシャトルバス「ブルンパッ!」(毎週日曜に走行)の車体イラストを手がけるなど、「大好きな昼寝と休みを忘れない程度に」精力的に活動を行っている。 www.okamepro.com
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